這い上がる!?

工場労働者の日々の小さな煩悩ブログ

追憶の「あま湯ハウス」。

お題「銭湯の思い出・・・」

 

こんばんは!

 

ご多分にもれず、私も大の銭湯好きなのだが、利用するにあたり、一つ「譲れない条件」という物が存在している。

 

設備やアメニティ、それに垢すりにマッサージといった「オプション」の充実度とか、そういう事ではない。

 

ひとえに「すいている時間に行く」、これに尽きる。

 

浴槽のへりに頭を乗せ、全身ダランと一直線に伸ばし、ふう~っ・・・と。これ、サイコーではないか!

 

体を洗い浴槽へ向かうと、既に数人の方が入っていて、体育座りを余儀なくされる。これでは内風呂があるのにわざわざ銭湯へ足を運んだ甲斐がない、というモノだ。

 

かつてローテーションシフトの仕事に就いて主に平日が休みだった頃は、いつ何時、どこのお風呂屋さんであっても、前述の「ふう~っ・・・」を満喫できた。しかるに現在土日休みとなり、週末に銭湯へ行こうとすれば、まあどこも激混みである。

 

金曜、土曜夜の銭湯、客が引いてくるのはだいたい22時を回ったあたりからだ。よって、今の暮らしで利用できるのは、深夜営業の銭湯に限定される。一般的な23時24時閉館のお風呂屋さんでは話にならない。なにしろその時間帯に出かけるのだから。つくづく週末は夜行性だな、私は。

 

まあともかく、深夜0時を回った銭湯である。お湯は汚れて垢まみれ、浴室内そこはかとなくアンモニアも漂うが、それでもゆったりと足を伸ばして寛げる。何物もコイツには替え難い。

 

ふと周囲を見遣ると、利用客は私も含め2~3人から数人。私一人という時も珍しくなく、高温槽に低温槽、電気風呂にジェットバス、薬湯、露天、つぼ湯、サウナに水風呂等々もう入りたい放題。全て私のモノ!状態だ。

 

さらに金曜の夜は、仕事疲れから眠気が来る。これがまたヨイ。時間も周囲も気にする事なく、浴槽に浸かりコックリコックリ(湯あたり注意)である。

 

そんな深夜営業の銭湯だが、実は私の周辺から消えて久しい。このご時世、効率の悪いご商売である事、我々素人でも想像に難くない。まして深夜、わずかな利用客のために夜通しボイラーを焚き続けるとなると・・・。

 

お題投稿一覧を拝見すると、間もなく廃業するお風呂屋さんを惜しむ声、やはり挙がっているようだ。ご時世、か。

 

それでは、かつて最も足しげく通った、ワタシ的100点満点のお風呂屋さんの思い出話など。

 

・・・

 

かつてJR尼崎駅のほぼ真ん前に、「あま湯ハウス」という温浴施設があった。

 

天然温泉の大浴場、仮眠も取れる休憩室、マッサージ室、食堂、軽食コーナー、ゲームコーナー、売店。各種マッサージチェアはそこここの通路壁際に。

 

浴室内に目を転じると、屋内に白湯の浴槽と温泉槽、薬湯、檜風呂に水風呂。スチームサウナと遠赤高温サウナ、岩盤浴、垢すり室。屋外には岩風呂とかけ流しのつぼ湯、いずれも温泉槽だ。

 

泉質はナトリウム泉。湯の華が結晶し、お湯が黄色~オレンジ色に濁っている。泥炭の匂い。有馬の「金泉」とよく似た感じだった。場所も程近いし、同じ物か?

 

スペックはこんな感じ。いわゆるスーパー銭湯だ。もちろんオールナイト営業。午前3時~5時の間は清掃のため大浴場は利用できないが、さすがにこの時間は家に帰るか、朝の一番風呂目当てに休憩室でイビキをかいているか、そのどちらかであり全く問題はなかった。

 

最低月数回はここに通った。毎週末の「解放感」を楽しむお気に入りの場所。加えて私はバイクが趣味なのだが、歳取ってバイクで遠乗りをすると体が痛くなるモノで、ツーリングの後も必ずここに立ち寄った。

 

そうそう、会社の飲み会もこの近辺でやる事が多く、退社後、あま湯ハウスの駐車場にクルマを入れ、つまんねー会社の飲み会をやり過ごした後、くさくさした気分をここのお湯でキレイサッパリ流したモノだ。

 

これほど、私の暮らしの中に深く食い込んでいた商業施設はなかった。空いた時間、ほぼ無意識に向かっていた「隠れ家」。いつも気付けばあま湯の浴槽に浸かっていた。仮にこのパラダイスが消えてなくなったなら、私の生活が一変する事は想像に難くなかった。それが、現実のものになった。

 

例えば私のブログのメインテーマである「ナイトクルーズ」に「未明クルーズ」。週末の解放感を楽しむ場所は、お風呂屋さんから深夜のPA(SA)、道の駅、或いはその辺の路上へと変化した。

 

それはそれで非常に楽しい事、自分の好きな事に変わりはないのだが、週末の深夜~未明にバイクで走り回る、齢50も過ぎてこのような暴走族まがいのマネをしているのは、ひとえにあま湯ハウスの閉館に端を発している。

 

何よりメンドウなのは、さて今回は空いた時間に何をしようか、いちいち考える所から始めなければならない事だ。何をしようか考えているだけで折角の休日が過ぎ去ってしまったり、何も考えずに街へと繰り出し、くだらない無駄金をはたいたり、「隠れ家」を奪われた独身中年男の休日など、まあロクなものではない。

 

・・・

 

ある日いつものように入浴に訪れると、「長年のご愛顧、従業員一同心より御礼申し上げます・・・。」閉館予告の貼り紙だ。一瞬の思考停止後、まず浮かんできた言葉が、前述「これ、生活が一変するなあ。」であった。

 

しかしその貼り紙をよく見ると、土地建物完全リニューアルの上、半年から一年後を目処に再オープンする旨、書かれてある。一縷の望み。信じて待つより他はない。

 

閉館後しばらくの間は、建屋も駐車場もよく手入れがなされた状態で保存されており、やがて来るリニューアルを充分期待させるものがあった。近くを通りかかった時は必ず様子を見に立ち寄った。「リニューアルなんかしなくていいのになあ。」と、鎖の張られた敷地の外から熱い眼差しを向けていたモノだ。

 

やがて建屋が取り壊され、そこに出現したのは、コインパーキングであった。・・・おい

 

ちなみに2023年現在の跡地の様子がコレだ。

閉鎖された商業(娯楽)施設→駐車場→マンション。何と言うかまあ、鉄板過ぎるトホホな変遷を辿り、かくして私のお気に入りの銭湯は(多分)未来永劫、復活する事はなくなったという訳だ。

 

・・・

 

現在私が知る所の深夜営業銭湯、最も近い場所では神戸に存在している。スーパー銭湯含め春日野道に二ヶ所、三宮に一ヶ所、新開地に一ヶ所。いずれもあま湯ハウス閉館後に突撃をしてみた。

 

しかしやはり、神戸は遠いのだ。いや神戸は決して「遠い街」ではないし、少々遠くて実際何か不都合があるのかと言えば、特にそういう事もない。

 

但し「ひとっ風呂浴びに行く」、このシチュエーションに於ては、かの70年代フォークの名曲の一節、「ふたりで行った横丁の風呂屋」である。銭湯たるもの常に「横丁」に存在していなければならない(旧き佳き昭和ナリ)!

 

何も徒歩圏内である必要もないのだが、フッと気が向いた時、躊躇なく小銭入れを掴み立ち上がれる場所にある事が望ましい。ヨシッ!と気合を入れて向かうのは、やはり何か少し違うような気がするのだ。

 

・・・

 

かれこれもう10年以上も前に閉館したお気に入りの銭湯の思い出話含め、私の銭湯へのコダワリ、だらだらと語らせて頂いたが、ああ日本人だなあと実感する次第だ。

 

読んで頂き、ありがとうございました。