こんばんは!
いつもの国道43号。朝も通勤で通ったばかりだ。
しかし今回のナイトクルーズはその会社までも到達しない、最近場、地元西宮の沿岸部に向かっている。
「海の日記念」という訳でもないのだが、私個人の「海」にまつわる思い出の場所をいくつか訪ねて回ろうと思う。
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梅雨明けも近いようで、あちこちで蝉が鳴きだしている。この蝉の声、特に朝、目覚めの時に聞くと、ある思い出、その感覚が強烈にフラッシュバックするのだ。
蝉の声を聞きつつ、目覚めるか目覚めないかの寝ぼけた頭で、「ああ、今日は休日か。面倒だが、せっかくお金かけてるんやし、乗りに行かんとなあ。」
例えばこのナイトクルーズでも、原チャリで手軽に週末の解放感を楽しみたい所、コンディション維持その他の理由で重量級の、しかも遠くに保管しているバイクを引っ張り出さざるを得ない状況がしばしばある。
その昔、これの超強力版とも言える経験をやらかしていた。PWC、マスコミ風に言うなら水上バイクである。
複雑な思い出である。それ自体、とても楽しい乗り物であった。庶民が(比較的)手軽に所有し運転を楽しめる「船」、よくぞ開発してくれたモノだと思う。
しかし今はもう私の中で過去の物となり、総合的に判断して失敗した買物であった理由、むろん初期費用や維持費も挙げられようが、それ以上に最初の期待値の高さが逆に災いしたと考えている。
当初のワクワク、ドキドキ感が強い商品ほど、よほど慎重に検討しGOサインを出さないと後々コケる可能性が高いという事で語らせて頂けたらと思う。
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ご多分に漏れず、私も海が大好きである。特に楽しい夏休みの記憶も蘇る夏の海だ。しかし男一人で夏の海へと繰り出しても、ナンパか水着姿の女性を見物に来たようでイヤらしい。そうだ、乗り物好きの野次馬興味で取得し、眠ったままの小型船舶の免許があるぞ。海岸沿いをゆったりクルーズでも出来たらさぞ楽しかろう。
何も考えていない、言わば衝動買いに近いノリなのだが、まず最初に付いたケチがこれである。
「海岸沿いをクルーズ」出来なくはない。だが水上バイクという奴、非常に制限の多い乗り物で、そう簡単には行かないのだ。
決定打として、航海灯を装備しない水上バイク、法規上、日の出から日没の間までしか乗ってはいけない。マリーナから少し離れた場所にぷかぷかと浮かんでいて、ふと気づくと日が傾きかけていた時の焦り、それはもう大変なものであった。
あと当然ながら海の上にGSなどない。万一海上でガス欠など起こそうモノなら、一発漂流、遭難である。
つまり水上バイクで一定の距離をクルージングしようと思えば、事前に時間、距離、速度(燃費)等を綿密に計算し、飲料水に小腹が空いた時のツマミ、必要ならば予備の燃料等をトランクに詰め込み、全て当初の計画に沿った「走り」が求められる。ぶらっと気ままに、は禁物だ。
信号待ちや渋滞がないため、時間や燃費等の計算はやりやすい。が、ぶっちゃけメンドウである。結果、マリーナの周辺(ゲレンデと呼ぶ)をただグルグルと走り回るだけになってしまうのだ。
例えばフィッシングボート。工業製品としての類別は水上バイクと同じだが、性質は似て非なる物だ。要はロッドやリール同様、釣りの道具である。アングラーがそれぞれのスタイルと狙う獲物に見合うポテンシャルの物を選択する。
プレジャーボート界で実はこの小型フィッシャー、「万能艇」として釣り人以外にも大変な人気なのだが、いずれにせよ「使い勝手」が売りの「道具」である。よって水上バイクの何倍も高価な品物ではあるが、「失敗した買物」に成り果てる可能性は極めて小さい。必要のない人(釣り人であっても)はハナッから近寄らないのだ。
水上バイクに話を戻す。その性質、「イメージ商品」で間違いはないであろう。それ使って何かができる訳ではない。「道具」とは違う物だ。
単純に購入に際し抱いていたイメージと実際に所有しての所感、「理想と現実」、このギャップが小さければ、それはそれは払ったお金に見合う価値があったというモノ。
私の場合、残念ながらそうはならなかった。
先述のクルージングの件もそうだが、この手の商品のカタログ等で、決まって商品写真の背景となっているエメラルドグリーンの美しい珊瑚礁。ごくごく当たり前の話ではあるが、船体ご購入のお客様にそれがもれなくオマケとしてついて来る事などあり得ない。
しかしそこが「イメージ商品」の難しさ。商品に対し、購入者は大なり小なり「その世界」を無意識に求めてしまうのだ。一方で現実はどうか。都会の海など水も汚ければ景色も悪い。「こんなハズではなかった。」違和感が少しずつ頭をもたげて来るという訳だ。
盲導犬種として有名なラブラドールレトリバーの仔犬を買い、「この犬、赤信号で止まらないぞ!」と文句を言う。そんな笑い話があるがまさにこれと同じ。イメージが先行し過ぎた結果、無用に肥大化した商品への「期待値」の成せる業である。
今回もすっかり前置きが長くなってしまったが、この「イメージ先行」「期待値」を振り返りつつ、過ぎし夏の思い出を辿ってみたい。
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ホムセンライダーはんぐりーまんご用達「バイク用品店」、ホームセンターコーナン西宮今津店だ。
その向こうに見える白い倉庫のような建物。水上バイクでお世話になっていたショップさんの「跡地」だ。
屋号を「サーカス」さんといった。ボートや水上バイクのみならず、冬はスノーモービル、他バギーやレーシングカートといったレジャービークル全般を扱う、乗り物好きには全くタマランお店だった。
様々な条件で断念したが、本当は水上バイクより二人乗りのミニホバー、あれ乗ってみたかったなあ!ほんの数年ではあるがマリンレジャーを楽しめた最大の条件は、そんな特殊な商品を扱うお店が、地元、家の近くに存在してくれたお陰である。
サーカスさんが閉店、廃業してしまった今、私が将来「マリンレジャー」を再び嗜むとすれば、それは潮干狩り位のモノであろう。
サーカスさん「跡地」前から逆にホムセン方向を眺める。
ショップは2Fにあり、その奥と1F、3Fは広大な艇庫になっていた。
左手の防潮堤の向こうは、公営マリーナの「今津パワーボートセンター」だ。入ってみよう。
小型艇や水上バイクを上げ下げする固定クレーンが2基見える。
お店の艇庫で保管してもらい、乗る時は(お店を通し)今津パワーボートセンターの設備を利用する。これが最初のマリンライフであった。
奥まで進んでみよう。
奥のクレーンの横。ヨットや小型艇が陸揚げされている。
どんつきまで来た。
当時はまだなかった白い大きな水門。
その手前に建つ今津灯台だ。
江戸時代からここに灯台が建っていたらしく、こうしてその姿が復元されている。
灯台の横手の水道。
クレーンで海に降ろされた後、この水道を通りライディングを楽しむ海域、通称「ゲレンデ」へ向かう。
さてそのクレーン上下架である。水上バイクの場合、クレーンで吊られたパレットの上に、多い時は2、3台ずつ運転者ごと乗り、海に降ろし、かつ海から上げてもらうのだが、ここでまた「イメージ先行」の呪いが頭を持ち上げるのである。
「これ、何か違うくね?」
従来のスクリュー艇にはないウオータージェット艇の利点の一つとして、直接砂浜に乗り上げできる事がある。だったら、乗る時は砂浜に降ろして頂きたい。クレーンで岸壁から吊るされるなんてあり得ない、というワケだ。
隣にある私設マリーナがそうだった。敷地内に水上バイク用の人工砂浜を作り、そこでフォークリフトやトラクターで水上バイクの上げ下ろしを行い、かつ水上バイクを浜に乗り上げたまま休憩も取れるようであった。
「ええなあ。」
走りながらいつも横目で見ていた。問い合わせると保管料はお店の艇庫と変わらない(少し安い位)。そこでお店とはオフシーズンのメンテ契約のみとし、艇庫は解約した。
それでは、今津パワーボートセンターを後に、その隣のマリーナへ向かう。
陸路だと3~4km西といった所か。
あれ?
この道で合ってる筈だが、ずいぶん景色が変わっている。そうか。もう20年近くも昔の話だ。
おっ!
この防潮堤、見覚えあるぞ!
あったあった!
だが公営の今津パワーボートセンターと違い、この時間はもう中に立ち入りできないようだ。
この辺昔は何もなかったが、
小さな海浜公園が整備されている。
私のブログの「常連」だ。
ピカピカで綺麗。この公園自体、整備されてまだ間もないようだ。
そうそう「御前浜」。
写真左奥、もう少し西に位置する芦屋浜からこの御前浜、そして東隣の甲子園浜あたりが、この辺の水上バイク乗りたちの主な「ゲレンデ」だ。
東へ戻る。
今津パワーボートセンター前を通り過ぎ、少し進むとこの橋に差し掛かる。
この橋の下をくぐれば、
東のゲレンデ、甲子園浜だ。ちなみに写真奥を走る高規格橋、阪神高速湾岸線と一般道が並走している。
割と眺めが良い。行ってみよう。
ふむ、写真だとイマイチだな。
ゲレンデの外になるが、この付近で私が好きだったポイントをついでに。
ナイトクルーズでも何度か走った、武庫川の土手だ。
土手の道の突端付近。
なかなか非現実的な風景だ。
写真右手に連なるコンクリの壁、
作業用ハシゴをよじ登ると、
武庫川河口付近。この辺りだ。
「河口付近は遊泳禁止」、聞いた事があるかと思う。潮流と川の流れがぶつかり、水流が三次元で複雑にからみ合い、水難の危険性が高い。曰く「足を引っ張られる」と。実際この河口付近、水上バイクで行っても、スロットルを煽り気味にしないと、なかなか行きたい方向に行けない事がよくある。
海面も常に荒れ気味だが、波でドンと押されるのとはまた違う、走っていてスロットルやステアがわずかにこうクッと重くなる感じ。あたかも海中から見えない手でも伸びて来て、船体を掴んでいるかのような感覚だ。
「舟幽霊」
川と海のぶつかり合いが生む複雑で強い水流。それが原因と突き止められるまでは「怪異」とされ、漁師や船乗り達から恐れられていたモノだ。今まで順調に進んでいた船が突然動かなくなる訳だ。それはそれはビックリしたであろう。
凪いだゲレンデをカッ飛ばすのにも早々に飽き、埋立地の外海へ出て、小さいながらも安全な「動力船」で、この舟幽霊のような面白い自然現象など楽しんでいた。
まあしかし、マリーナ周辺をただグルグル走り回っていて、面白い自然現象などそうそう見つかるモノでもない。この時点で既に、記事冒頭の「面倒だが乗ってやらんとなあ。」状態であった。購入後2~3年も経過した頃であろうか。
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ある日ショップのスタッフさん曰く、
「この度淡路島にマリーナをオープンする事になりました。如何ですか。景色は最高ですよ!」
「おお、淡路ですか!」
実際のところ、西宮の自宅から淡路島は遠過ぎ、決定的に足が遠のく原因になってしまったのだが、そこは発動しっ放しだった「イメージの呪い」がある。所有する水上バイクをはるばる淡路島まで移動させたのであった。
ついでに。
今津パワーボートセンターでも、隣の西宮マリーナでも「船出」をするとまず目に飛び込んでくるこの巨大な施設。
これ、下水処理場である。
言うまでもなく環境にとって、我々の暮らしにとって無くてはならない施設である。決して下水処理場が悪い訳ではない。しかし一度で良い、綺麗な海で走りたいという「イメージの呪い」にとり憑かれた者にしてみれば、イヤさすがに下水処理場は見たくないだろう。
「淡路島なら、高いお金を払って望んだ世界が手に入るに違いない!」・・・さあ、今まで影の中に見えつ隠れつ付き纏ってきた「イメージの呪い」、いよいよ本格的に牙を剝いてきたという訳だ。
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三連休。明晩はこの淡路マリーナを訪ねてみようと思う。現在どうなっているのやら。淡路マリーナは利用した期間も短く場所もおぼろげで、果たして見つかるかな?水上バイクから明石海峡大橋を見上げた記憶があり、とりあえず淡路島北端の橋脚付近でも徘徊してみよう。
今回の記事、朝蝉が鳴いているのを聞いて思い付きで書き始め、画像集めも主に地元の海、当初1000~2000字程度にまとめる予定であったが、やはり数年分の思い出、書きたい事が次々と浮かんできて、すっかり長くなってしまった。
地元のマリーナとゲレンデを一回りした所で、この記事一旦締めようと思います。
読んで頂き、ありがとうございました。