こんばんは!
「荒城の月」のメロディが不意に浮かんできた。よし、お気に入りの城跡公園で滝廉太郎気取りの月光浴でも決め込んでやろうと思ったのだが、肝心の月が出ていない。
今夜は新月か、或いは夕方か明け方、地平線付近に細い三日月がかかり、すぐに見えなくなるパターンのようだ。闇夜のクルーズである。月など出ていようがいまいが、とりあえず向かってみるとしよう。
直線距離で40km程北に位置する兵庫県丹波篠山市。旧篠山藩6万石の城下町、その「藩庁」篠山城が、今夜の行き先だ。
月明りもない暗い夜に郊外へ出掛けるという事で、今夜の下駄はまたまたコイツ。
最新式のLED灯火には劣るのであろうが、このマルチリフレクターレンズによるヘッドライト照射範囲をご覧頂きたい。
幅もさる事ながら、すぐ手前、前輪付近が非常に明るく照らされている。四輪であればドライビング(フォグ)ランプが担当するエリアだ。
夜道、登り坂の頂点付近では、ヘッドライトは中空を照らし、目の前の道が一瞬ブラックアウトする。これにカーブが重なると・・・。
前回記事の六甲縦走道路で、この「手前も照らす」RP22のヘッドライト、それはもう目を見張る威力を発揮したモノだ。
遠い一点をポトンと照らすだけのモンキー号やST号のヘッドライトでは、前回のクルーズ中にガードレールを突き破っていたかも知れない。旧車やシンプルなバイクは好きだが、こういった細かな安全性能などは、やはり最近のモノに軍配が上がるという事だろう。
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逆瀬川沿いの道。
スタートは前回記事同様だ。
実はこうしてモンキー号を休ませている間に、篠山方面を訪問しておくつもりではあった。その理由として、家から篠山方面に向かう際、モンキー号では「越すに越されぬ」難所が立ちはだかっているのだ。
この先もうすぐその難所が現れる。行ってみよう。
六甲山中に入った所。
この先を左折すると前回記事で走った六甲縦走道路。右手の青信号の方へ進むと、やがて国道176号と合流し、篠山方面へと通じているのだが、こちらへ進むとスグ。
「原チャリ難所」磐滝トンネルだ。
少し前まで有料であったこのトンネル、当時も30円だか50円だかで原チャリも通行可能ではあったのだが、全長2kmのド直線、常に高速道路並みの速度で車列が流れ、しかも片側一車線で路肩ナシ。逃げ場ナシ。モンキー号ではそれこそ決死の覚悟で突入しなければならない。
トンネルの上を走る旧道は今も生きてはいるが、確か二輪車の通行に規制がかかっており、このトンネルをパスして篠山方面方面に向かおうとすれば、宝塚あるいは神戸経由と、大変な遠回りを強いられるというワケだ。
磐滝トンネルを抜けた所。
ゲートは既に撤去されているが、柵の奥が料金所事務所跡だ。トイレと自販機、喫煙所があり、ちょくちょく立ち寄っていた。痛し痒しだ。
ここで夜空を見上げてみる。
やはり月はない。
金仙寺湖(丸山ダム)。私の嫌いなモノ、人造湖だ。
まあ必要なインフラではあるのだろうが、ここは人造湖特有の陰鬱な「気」を特に強く感じる場所で、昼間でも何かどんよりしていて気味が悪い。早々に立ち去る。
やがて地域の主要街道、国道176号へ出る。
あとは道なりに進む。ちなみにこの辺りが地元西宮市の北端だ。
北隣の町、三田市に入る。
こういった「最近場」はいずれモンキー号で散策するとしよう。道々の風景を楽しみながら、神戸または宝塚経由でぐるっと遠回りもむしろ良いかも知れない。
ひき続き国道176号を進む。
左手をJR福知山線が並走している。
駅の一つに接近してみる。
おっ!まだ終電前か。
ヘッドライトを消すと手元も見えない程の真っ暗闇だ。
あ~街の灯が遠い。
人は本能的に闇を恐れると言うが、なるほど実感。お化けや獣が出そうと言うより、シンプルに圧迫感が凄い。灯りを落とした途端、ガツンと「漆黒」に押し潰されるように身動きが取れなくなる。そう、押入れに閉じこもっている、あの感覚だ。
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JR篠山口駅。
特に用もないのだが、久方ぶりの「街の灯」に、ふらふらと誘い込まれるように駅前ロータリーへ。街灯に何となく(?)集まっているガやカメムシの如く、だ。
ついでに本日の公衆トイレショット。
公衆トイレなど、篠山城周辺にも間違いなくあるのだろうが、念のため。
目的地も近づいた所で、もう一度夜空を見上げてみる。
今夜やはり月は出ないか。
過去に幾度となく散策に訪れた当地ゆえ、このように案内表示等を頼りに何とか城に接近できてはいるが、距離や方角の感覚などとうに失くしている。
暗い夜道、ナビなしでは迷うぞ、と。いやマジで。
篠山城到着。
が残念!この闇夜にライトアップも既に落とされ、清々しい程の真っ暗闇である。
携帯カメラでフラッシュを焚くと、白くモヤがかかったような劣悪な画像になるのだが、この入り口を数m入った所にある大手門前まで進んでみよう。
近年再建された大書院(陣屋)が見える。小ぢんまりとして可愛らしい、大変情緒のあるお城だ。
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なぜかお城だけが格別暗いので、
周辺の散策に入る。
たんば田園交響ホール。
立派なコンサートホールだ。
市立歴史美術館。
こちらは市立青山歴史村。
の裏にある公衆トイレ。
中はとてもキレイで木の良い香りもする。本日の公衆トイレショットⅡだ。
お土産物屋さんやカフェ、レストランが入居するショッピングセンター。
建屋は何と1923年竣工の旧篠山町役場だそうな。
お城だけではなくこの周辺、このような古い建築物を改装した商業、観光施設が所狭しと建ち並び、地域全体が歴史博物館のような感じだ。
そして!お城と並んで大のお気に入りである昭和レトロな商店街、二階町青山通りだ。
歴代藩主の青山家に因んだネーミングなのだろうが、華やかなメインストリートの名が「青山通り」とか、まずこのニアミスが素晴らし過ぎる。
青山通り?篠山にもあるよ、という事で。
これら全て現役の商店である。お城同様、週末ともなればカメラを携えた多くの観光客で賑う。
旬のもの。
この季節、特産の黒枝豆を即売するスタンドが市内各所に立つ。めちゃウマらしい。
もう一つ、グルメ垂涎の超高級珍味。
ご当地名物料理だ。こちらもちょうどこれからシーズンになるのかな。
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この青山通りとは別の商家群や武家屋敷群など、他にも見所は沢山あるのだが、はて?場所を良く覚えていない。普段お城と青山通りをそぞろ歩くだけで満足して帰っているからなあ。
何より、都会と違ってこんな深夜に懐中電灯片手に徘徊している人間など、周囲を見渡す限り私一人だ。不審者と思われてもナンなので、そろそろ引き上げるとしようか。
画像暗くて良く分からないと思うが、城の堀端を流している。
気持ちが良い。
国道372号に入る。
阪神間の激混み都市圏を避け、京都から姫路岡山方面へバイパスするショートカットルートだ。
震災で寸断された国道2号に代わり、東西の代替幹線として活躍した事は記憶に新しいが、この「デカンショ街道」の愛称の他、「篠山街道」「西京街道」の古名も有し、割と古くから存在した道のようだ。
「京都」を中心とした旧きニッポンの名残りを静かに物語るこの道、昼間走ると、ぐるり360°広がるのどかな田園と里山。実に解放感ある、走っていて気持ちの良い道だ。で、その代わり夜はこの通り、吞み込まれそうな深い闇が待ち受ける。
沿道の小学校。
このような「歴史的建造物」が本当に何食わぬ顔でそこここに佇んでいる。
田園に里山、そして歴史的建造物が気さくに迎えてくれる、そんな街丹波篠山。「ニッポンの原風景」を是非!
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さて、来た道(国道176号)を引き返すも良いが、ふとした思い付きで、地元阪神地区と丹波、但馬地区を結ぶルートとしては一本東の国道173号を帰路に選んでみた。
その思い付きとは、普段使いで実用性のないこのRP22で、非常に楽しく快適に流せる(かも知れない)道が、この先に存在するのだ。
近隣在住のバイク乗りならご存じ、能勢の山越えである。
前回記事で走った、タイトなコーナーの連続する六甲縦走道路とは違い、こちらは主要国道。要所要所でトンネルや切通、渓谷を跨ぐ橋などでバイパスされ、キツいカーブも無ければ道幅も広く、非常に良く整備されている。
一方その副産物として、上り下り一本一本が異常に長く、トルクの細い中型以下のバイクではアクセルをひねってもひねっても前へ進まないという、地元の名物道路である。
以前SRで走った際、エンジン回転数が常に爆上がりで、確かに不快指数は相当高かったのを憶えている。地方の主要国道など、あくまでトラックや営業車が快適に走るため整備された道なのだ。
さあここだ。
ワクワクである。
・・・あっけなく走り抜けてしまった。何なら篠山までもう一往復しても良い位である。リッター7kmの極悪燃費が示す通り、一般道ではくすぶりながら走っているようなこのバイクの、水を得た魚のような無双っぷり。この峠道を流して楽しいと感じたのも今夜が初めてである。
峠を越えた所にある道の駅、能勢くりの郷。
闇を切り裂く眩いライトと四輪並みの大トルクで、「夜の能勢越えだけなら任せとけ!」その勇姿である。ちなみにこのバイクのチャームポイントである極悪燃費に目立った変化はなかった。
どれ、ニヤニヤしながら熱いコーヒーでも。
と思ったがまたまた得体の知れないドリンク発見。
ドロッとした芋味のミルクセーキといった感じ。しかも後味がべっちゃりと尾を引く。うむ、コイツはなかなかレベルが高かった。
さて、峠は越えたもののもう暫く暗い山道が続く。気を引き締めて帰路につこう。
芋ミルクのお陰様ですっかり目も覚めたが。
一庫(ひとくら)ダム。
心霊スポットらしい。
となると、これがあの有名な電話ボックスかな?
それらしい「モノ」も写っていないようだし、違うか。
いずれにせよ、「道路脇に立つ電話ボックス」で有名は有名なのだが、果たしてどんなエピソードだったのか忘れた。
引き続き家路を急ぐとしよう(別に急ぐでもないが)。
先程の電話ボックスを発ってすぐのこのトンネル内で、交通事故のため片側交互通行が行われていた。
そう言えば件の電話ボックスの怪談話も、確か交通事故がらみだったような気がする。
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今回のナイトクルーズ、ちょいダークな話で締める事になりそうだが、図らずも「心霊スポット」一庫ダムの前を最後に通りかかったのも、闇夜の風情というモノか。
本当に真っ暗な夜だった。
読んで頂き、ありがとうございました。