這い上がる!?

工場労働者の日々の小さな煩悩ブログ

ナイトクルーズ10 寝静まる花街。

こんばんは!

 

今回の記事で、私のナイトクルーズも10回目の区切りを迎える事ができた。

 

それに因み、今回はもそっとバイク乗りらしいツーレポ記事(SA道の駅でソフトクリームとか)でも、というような事を考えてみたりもしたのだが、ダメだ

 

先月の深夜参拝クルーズの帰り、イタズラ心で松島遊郭に立ち寄ってみたのだが、どうもあの光景が脳裏から離れないのだ。

 

客にせっせとカネを貢がせ続けるべく、猛毒を打ち込む非常に怖い街だが、一方でテーマパークかはたまた風致地区かと思わせるようなレトロで愛らしい街並み。まさに毒、棘を持つ美しき花である。今一度、散策に訪れてみたいものだ。

 

立ち寄りではなく、そこを目的地とするならば、やはり「ご当地NO1」を避けて通っては片手落ちというもの。

 

「そうだ、飛田へ行ってみよう。」今回のナイトクルーズである。

 

初めて訪ねる土地に向かう時、それが到達可能な距離である場合、私は基本原チャリを使う。目指すポイントに直接乗り込める。「停める場所」を特に探す必要がない。そして現地付近で道に迷い、キョロキョロしながら(道を聞きながら)走り回る際の使い勝手の良さなど、メリット盛り沢山だ。

 

場所は以前にナイトクルーズで訪れた天王寺の近く。国道43号コースだ。ここは当然、私の「ファーストバイク」モンキー号の出番である。

前回FR二本同時に交換したのだが、リアの減りがえげつない。蛇足ながら、ファーストバイクの証だ。

 

・・・

 

一つ、この手の街で絶対やってはいけない事、それは「冷やかし」である。むろん、遊びに行ったものの何かの事情でどこへも寄らずに引き返す、これはOK。回頑張ってくれ。それだけの話。

 

しかし、近年この飛田遊郭はその抜群の知名度ゆえ「観光地化」が進み、にこやかに佇む「仲居さん」、そして名物である呼び込みのオバちゃんの「売り口上」、ただこれらを見物するためだけに当地を訪れる者が後を絶たないという。

 

客を捕まえる確率が上がるという点で、お店側にすれば「観光地化」もまんざらでもないのかも知れない。しかし彼女たちは「見世物」ではないのだ。お店にお金を落とすつもりがないのなら、当地への訪問は控えましょう。

 

底辺工場労働者、なおかつ自動車税がらみでこの6月給料日前は毎年一年中で最も赤貧である私。結局のところ、「冷やかし観光客」と同じ穴の狢である。せめて邪魔にならぬよう、営業時間外にコソッと散策に行くという訳だ。

 

そのうち臨時収入でもあれば、「旦那気取り」で闊歩するから、姐さん方、ごめんやで!ちょっとだけ仕事場覗かせたってな!

 

という事で、「夜の街」がさらに寝静まった頃合いに散策をする。これまたナイトクルーズの醍醐味ではなかろうか。最終の客を送り出し、閉店作業も片付いた午前2時前後の現地到着を狙う。今回も「未明クルーズ」に近い形になりそうだ。

 

・・・

 

トリップメーター確認だ。

ミナミ方面という事で、前回の「ならしクルーズ」よりロングクルーズになるかも知れない。

 

今年初登場、蚊よけのお守りだ。

当面ナイトクルーズにコイツは欠かせないだろう。では出発だ。

 

いつもの国道43号。

この辺りまではまあ、毎朝見慣れた通勤ルートなのだが、このまま直進を続け、大阪へ向かう。

 

県境到着。

さあ、例の「原チャリお断わり立体交差」と「右左折専用レーン」に気を配りつつ、しよう。

 

天王寺少し手前。

この今宮の意表を突いて現れる踏切これを越えたすぐ先の交差点を右折し、堺筋を少し南下すれば現地到着の筈だ。

 

今回道中はしょったが、国道43号の風景は過去の記事で何度か取り上げているし、特に兵庫県内は道路の両サイドに防音壁が立っている個所が多く、ここ、景色そのものがよろしくないのだ。

 

・・・

 

到着。現在午前1時36分。

飛田大門跡に建つ看板だ。

 

最寄り駅は大阪メトロ堺筋線動物園前駅になるのかな。あと阪堺電軌というチンチン電車(ああ、あの右折前の意表を突く踏切がそうか?)がもうひと駅近くに来ているらしい。

 

知らない方は「料理組合」ってなんのこっちゃ、となるだろうが、飛田、松島を始め大阪の遊郭(新地)にあるお店、業種は「料亭」、そこで働く女の子は「仲居さん」「お運びさん」。これ以上のツッコミは野暮、いやナシ」だ。

 

この看板をくぐり、とりあえず大門通りを進むが、ヤバい、ここメチャクチャ広い。変な路地裏なんかにバイク停めようモンなら、散策している間に場所が分からなくなるぞ。

 

おっ!

案内板が立っている。

 

この案内板のほぼ向かいにある「飛田ふれあい会館」前にちょっと失礼。歩道も広い。

飛田遊郭の現在の行政区画、いわゆる「住所」だ。大阪一のディープスポット「西成」に当地は位置する。

 

案内板の左手奥、非常に小綺麗な公衆トイレだ。

お遊び後のお待ち合わせにどうぞ、といった感じか。

 

自販機とベンチも並んでいる事だし、営業終了後に公衆トイレまでこんな高さのある鉄格子で囲わなくてもいいのになあ、とふと思ったりもしたが、そこはディープスポット西成、「お客様第一」を考えての措置か。これまた瞬時に納得。

 

カッチョええモニュメント発見!

なるほど「観光地化」か。

 

ご当地ならではのユニークな施設。

お店に客用シャワーはない。男共はまずこういった所で「身を清める」。いにしえからの作法、様式美だ。

 

本格的な銭湯も近くに営業しているらしい。「銭湯ファン」はんぐりーまん、少し探し回ってみる。

この隣接するアーケード街なんかにありそうだな、などと考えつつ歩くも発見できず。店舗数約150、飛田遊郭単一業種歓楽街にしては恐ろしく広大だ。

 

とまあまず大門通り近辺を歩いてみたのだが、ここ、本来メインストリートになりそうなモノだが、なぜかこの通りに建つ「料亭」は存在しない。あるのはこういった組合関係の公共施設にパーキング、あと一般の商店、住宅(マンション)等だ。何か取り決めでもあるのだろう。

 

それでは、例の案内板を参考に、一番北側の「青春通り」から順々に、建ち並ぶ料亭を見に行ってみよう。

 

正式には桜木町通りという。

在籍する仲居さんの年齢層が全体的に低めなので、「青春通り」の通名が付いたそうな。

 

通りを中程まで進む。

どんつきに塀のような物が見える。行ってみよう。

 

昔々、当地に売られてきた遊女達が、その壁の高さを見遣り、故郷の家族を思い涙したと言われる、有名な嘆きの壁跡だ。

遊郭の東のへり、敷地を南北に縦走する「嘆きの壁」跡地、現在はこのように「壁」メモリアルの巨大なモニュメントと共に遊歩道として整備されている。

風光明媚であり、かつ遊女達の無念を表現する「凄み」もある。実に秀逸なデザインだ。

 

喫煙所もあるよ。

私のような喫煙者にとって、当地のような「男のプレイスポット」、涙が出る程ありがたい。今時梅田、三宮なんか歩こうモンなら、下手したら一日中タバコを我慢するハメになる。

 

ここらでお気付きだろうか。この時間、飲食店、風俗店等が乱立する「雑居」繁華街になると、もうそこら中ゴミだらけの汚物まみれ、あたかも遠い国のスラムを彷彿とさせる惨状を呈するのが世の常だ。

 

ところが前回の松島然り、この遊郭の丑三つ~寅の刻、良く清掃されており非常に清潔、居心地が良い。運営組合さんの掛け声でビシッと自らを律しておられるのであろう。「コワモテの仁義」、やはりカッコ良いモノだ。

 

さて、「嘆きの壁」に跳ね返される形で一本南の山吹町メイン通りへ。

「メイン通り」の通名通り主力がしのぎを削る激戦区。一見して通りも広く、店舗の密集度も高い。営業時間中ここが最も賑やかなエリアである事がありありと想像できる。

 

右手手前のお店、もう玄関に灯りが点いている。

むろん営業時間外で閉まっているが、このように既に中に人がいるらしいお店、いくつか確認できた。明日の早番営業に備え支度中、といった所か。週末を控え、気合い充分だ。

 

特に通りの角地に建つお店の外観が素晴らしい。名画「吉原炎上」の中梅楼のような「大店」なのであろう。

いずれも山吹町メイン通り。この大正任侠映画のセットを地で行くような威容だ!美々しいモノである。

 

貧乏人である私、花街のお遊びにはあまり詳しくないのだが、近年ではデリバリー型が主流になっており、店舗で客を待つ昔ながらのスタイルはおしなべて下火になってきていると聞く。

 

なに、なに!?女性が伝票と釣銭、それに商売道具一式担いで、指定の場所にピンポーンって訪ねて来るのか!?「至れり尽くせり」っちゃそうだが、なんだかなあ。

 

この艶やかなる花街のメインストリートで颯爽と肩で風切る。まず「場の空気」を楽しむ。男共よ、まずはここから始まるモノではないのか!?この考え、古いだろうか?

 

一旦大門通りまで戻って来た。

嘆きの壁から眺める。なるほど、広い道路に駐車場、ここはクルマでやって来た客のための設備がしつらえてあるエリアだ。そんな側面もある事が想像できる眺めだ。

 

それでは引き続き、この大門通りの南にある弥生町通り、若菜町通りを歩いてみよう。

 

弥生町通りと言えば、まず名店「鯛よし百番」さん。

こちらは本物の割烹料亭。その建屋は大正時代に遊郭として建設された物そのものだ。要予約。

 

この名店に因み、弥生町通りは「百番通り」の通名があるようだ。

この大門通りの南に位置する百番通り、若菜通りだが、件の案内板等の広報物には載らない「非公式」通名が存在している。

それはこちらの各お店、在籍の仲居さんの年齢層が比較的高めである事に由来する。

 

ここナニワ西成では、それを「姉系」「妻系」などといった優しげな呼び方など一切しない。その名も「妖怪通り」または「年金通り」である。

 

それでは歩いてみよう。

 

百番さんほどではないのだろうが、築年数が古そうな、風情ある建屋だ。

向かって左のお店、屋号もユニーク。何と読むのだろう。

 

確信犯!?

このエリアの各お店、建屋の外観に鶴亀松竹梅のデザインをあしらったモノが多い気がする。

 

全体的に小奇麗で整然としているイメージだ。

店先のシニアカーちょっとイミシンで笑えるが。

 

さあいつの日か私が臨時収入を得、この由緒ある歓楽街を再訪したなら、まあ「青春通り」「メイン通り」はないな。うん、ないない。

 

百番、若菜の仲居さん、アラフォーが主力、と聞く。なに、アラフォー?なんだ、全然イケるやん。アラフォーと言えば、下手したら私より一回りもうら若き女性だ。イケるイケる!

 

個人的見解だが、私みたいな50ツラ下げたような男が、例えこのような遊びであっても、お相手の女性に「若さ」という条件を付ける。これ、下品醜怪の極みである。

 

「お客様は神様です!」こんなイデオロギーを唱えたのは三波春夫一人だけである。客は神ではない。金さえ出せば何でも要求できると思ったら大間違いだ。身分相応、値段相応という言葉がある。すべからく、だ。

 

噂、あくまで噂だが、この大門通りから南のエリアでは時と場合により、値段やサービス内容について「交渉」がきくという、「青春通り」「メイン通り」にはない特典があるのだとか。呼び込みさんの「売り口上」も堪能できそうだし、どう考えてもこちらの方が楽しそうだ。

 

何より、妖怪だ年金だなどといった罵声を浴びせられつつも笑顔で客を迎える、その究極のバイタリティ、感服に値する。昔はメイン通りでブイブイいわせた姐様かもしれない。これ、多分当たりクジを引く。直感的にそう思う。

 

とまあ、いつの日か臨時収入でも入ったらの夢想をしつつ、ここにも「角地の大店」はあるよ。

やはりええ店構えだ。

 

ふむ。

このぼんぼりと提灯の昔ながらの暖かい光。これがどこかホッとさせるような居心地の良さを醸し出す。今風の冷たい感じのLEDイルミより断然良い。もっとも、この「居心地の良さ」も、緻密に計算され尽くした「毒」の成分の一つではあるのだろうが。

 

さて、最終四本目の若菜通りだ。

飛田遊郭の南のはずれに当たる。

 

うん、確かにメイン通りなどと比べ、ごちゃごちゃっとした「場末感」はありありだな。

しかし何と言うか、この庶民的な生活感みたいな奴に妙な味わい深さを感じるのは私だけだろうか。やはりきちっと清掃も行き届いており、少々場末感は漂うがうらぶれた感じはしない。ここはここで穴場狙いのマニアなんかが通ってそうな気がする。

 

いつか再訪の折には、むろんこの通りも外さず歩いてみるとも(夢想)

 

さてこの広大な飛田遊郭、一通り歩き回っただけでとうに午前3時を回ってしまった。

 

飛田料理組合さん。当地では異彩を放つ、近代的なビルだ。

お邪魔しました。ありがとうございました!

 

・・・

 

中開の交差点を右折し、新なにわ筋を北上中だ。

少々遠回りになるが国道2号経由で帰ろう。

 

国道43号大正、此花区あたり、このような高さのある橋や立体交差が多く、

出力3.4馬力のモンキー号にはやはり少々キツい。

 

となると、門前を素通りはできまい。

お陰様で楽しいナイトクルーズでした。ありがとうございました。

 

しかし前回、参拝の帰りに思いつき遊郭に立ち寄り、今回遊郭を散策した帰りに思いつきで変えたルートが好きな神社の門前を通る。

 

歴史的、文化的に、神事祭礼と言えばだいたい遊女の影がチラつくものだが、スピリチュアル的にも両者は深い所で繋がっているのだろうか。はてさて。

 

いつもの阪神尼崎駅前でトイレと一服。

ここで夜が明け始めたようだ。

 

・・・

 

帰宅。すっかり明るくなった。さて今回の走行距離は?

やっぱり50キロか!

 

なんだかもう笑ってしまうが、同じ50キロの道程を、原チャリでゆっくり時間をかけて楽しむ。やはりこれが「ワタシ流」のようだ。

 

読んで頂き、ありがとうございました。